出雲崎町・細長い妻入り屋根が連なる町並み


出雲崎(いずもざき)町。
新潟県中部の日本海沿岸に位置する、人口4000人余りの小さな町です。
演歌歌手ジェロさんのヒット曲「海雪」に登場した町としてご記憶の方もいるかもしれません。

2021年初夏のある日、わたしは気まぐれに出雲崎の町家に立ち寄り、そこで出会ったガイドさんから、この町の豊かさを教えてもらいました。
出雲崎は、決して「演歌の似合う寂しいだけの町」ではありません。

この旅行記で、皆さんにも出雲崎の歴史と魅力をお伝えできればうれしく思います。

新潟県三島郡出雲崎町の白地図
【予定外の町家巡り】
実は、わたしはこの日、町家の見学をするつもりではありませんでした。
新潟県の海沿いを走る国道352号線(日本海夕日ライン)をドライブ中に出雲崎の「道の駅」に立ち寄ろうとしたところ、ここが大混雑。
別の休憩場所を探してたまたま見つけたのが、伝統ある町家を活用した施設だったのです。
出雲崎町では町家の再生に力を入れており、改修された町家はいずれもガイドさんのいる学習・交流施設として開かれています。
ガイドさんのお話はとても興味深く、わたしは勧められるままに出雲崎にある3つの町家をハシゴしてしまいました。

木の壁を持つ「妻入り会館」の外観
【北国街道 妻入り会館】
道の駅をあきらめてまず向かったのは、休憩所を兼ねた観光交流施設「妻入り会館」。
道の駅がある国道352号線から、内陸側に通りを1本入ったところにあります。
この通りは「北国街道」と呼ばれ、江戸時代のメインストリートだったそうです。
少し道に迷いましたが、看板を目印にたどり着けました。

駐車場は、道路を挟んで会館の向かい側です。
路面は段差が無くフラットですが、歩道と車道の区別がありません。
交通量は少ないものの、道幅は狭く、車がすれ違うにはゆずりあう姿勢が必要です。
道を渡るときは左右をよく確認してください。


妻入り会館の縦に長い座敷
入口の引き戸を開けると、「どうぞ」とガイドさんが声を掛けてくださいました。
予約もなしに訪れましたが、あたたかく迎えてもらい、安心できました。

入ってすぐの所には情報コーナーがあり、その奥に座敷が縦に連なっています。
そして、和室の右側には1本の長い廊下が。
「これは、妻入りの家ならではの間取りなんです」
とガイドさんが語り始めます。

「妻入り」とは、通りに面する間口が狭く、細長い建物の呼び方だそうです。
出雲崎はかつて江戸幕府直轄の「天領」であり、間口の広さによって税が掛けられたために、このような造りの家が増えたとのこと。
また、裏口が海に面しているので、長い廊下は海で獲れた魚介類や船で届けられた商品を運び入れるのに重宝したそうです。


妻入り会館の廊下と飾られた大漁旗
廊下の吹き抜けにはカラフルな大漁旗が飾られています。

吊り下げられた紙風船や手まり
座敷には、特産の紙風船が吊り下げられていました。

妻入り会館の多目的トイレ
廊下はフラットで、奥には多目的トイレも備えられていました。
伝統的な構造の建物ですが、バリアフリーにも対応しています。



【出雲崎寄港地の町家】
「妻入り会館」の隣にある「出雲崎寄港地の町家」は、2021年5月にオープンしたばかり。
商家の特徴を持つ町家です。

「出雲崎寄港地の町家」の内部 番頭さんの座る場所
こちらのガイドさんからは、北前船(日本海回りで商品を売り買いしていた商船)の文化を学びました。

お金が流れ出ない工夫のある「船金庫」
家の中には、海難から貴重品を守る「船金庫」、船の名鑑や旗などの貴重な資料が展示されていました。
商売に命を懸ける人々の知恵と祈りがそこにありました。

北前船の模型と和釘
初耳だったのが「出雲崎は造船業も盛んだった」ということ。
ガイドさんによれば「出雲崎の船で使う釘(くぎ)の生産をきっかけに、燕(つばめ)・三条地域の金物づくりが発展した」そうです。
(諸説あります)


【歴史や五郎兵衛】
3つ目の町家「歴史や五郎兵衛」は1kmくらい離れた場所にあったので、車で移動しました。
海沿いの駐車場に車を停め、内陸に2分歩くと入口に到着します。

間口の広い「歴史や五郎兵衛」の外観
元々料亭だったこちらの建物は、これまでの町家に比べ間口が広くなっています。

内部にも珍しい構造がいくつも残されていました。
・玄関の地下に造られた雪室(ゆきむろ:雪を利用した天然の冷蔵庫)
・重厚な土蔵
・明り取りにも役立つ小さな中庭

細長い家の中ほどにある土蔵
ガイドさんに案内されながら奥へと進みます。



一番奥の部屋は、赤いお膳の並んだ広い座敷でした。
このお座敷、かつては海の上にせり出していたそうです。
海を間近に感じながら食べるごちそうは、さぞおいしかったことでしょう!

赤いお膳が並んだ奥の座敷
入口に戻ると、白黒写真の展示パネルが目にとまりました。

昭和の白黒写真が多数載ったパネル
浜辺で野球をする若者や、和装の花嫁さん。
みな、生き生きとした表情です。
「出雲崎では、江戸時代さながらの豪華な花嫁行列が昭和まで残っていたんだよ」
シニア世代のガイドさんが懐かしそうに話されます。
その誇らしげな表情は、どんな資料よりも説得力がありました。


「歴史や五郎兵衛」の古時計と浮き玉を使った照明
【旅を振り返って】
旅先で人に積極的に話しかける度胸のないわたしにとって、ガイドさんが待っていてくれる町家はとても居心地の良い場所でした。
また、もしこの日にガイドさんと出会わなければ、わたしは出雲崎の豊かさに気づくことはなかったでしょう。
何気なく通り過ぎてきた景色も、歴史を知ると色鮮やかに見えてきます。
新しい旅の楽しみ方を知った幸運な休日でした。


妻入り会館 にいがたバリアフリーガイドマップ
https://www.niigata-bgm.jp/detail.php?id=6786
※トイレはこの「妻入り会館」または近くにある道の駅「天領の里」がおすすめです。
「出雲崎寄港地の町家」と「歴史や五郎兵衛」は古い町家の構造が残されているため、出入口や廊下の一部がバリアフリー未対応です。


出雲崎町観光協会
https://www.izumozaki.net/tourism/hokkokukaido/


【ご注意ください】
・ガイド不在の場合もあります。詳しくは各施設にお問い合わせください。
・記載の内容は旅をした当時のものです。
変更されている場合がありますので、各施設等の情報は事前にご確認ください。


女性/40代 発達障害

信越地方在住。
発達障害(自閉スペクトラム症/ADHD)の特性をもつ。
事務系のクローズ就労とオープン就労を経て、現在は主婦。
趣味は文通、アドベンチャーゲームとバウムクーヘンの食べ比べ。

もともとはインドア派のわたしですが、ドライブとアウトドアが大好きなパートナーの影響で少しずつ出掛ける機会が増加中。
感覚過敏で疲れやすいため「低刺激の旅」を心掛けています。
失敗や反省もまるごとつづった旅行記を書いていきたいと思っています。

旅行エリア
中部, 新潟県, 出雲崎町
旅行期間
対象読者
発達障害 精神障害 その他
見つけた設備・特徴 ピクトグラムの説明 新しいウィンドウで開きます

関連タグ
発達障害ADHD自閉症ドライブ歴史的建造物町家ガイドボランティア語り部江戸時代