【にとこみえーる館】
車のワイパーが休む間もないほど強い雨の中、最初に向かったのは寺泊エリア北部にある国土交通省の施設「にとこみえーる館」です。
日本一長い河川である信濃川。
寺泊には、信濃川の水害を防ぐために作られた人工の川「分水路」があります。
その名は「大河津分水路(おおこうづぶんすいろ)」。
河口からおよそ40km手前に作られた大河津分水路は、信濃川を流れる大量の水の一部を日本海に逃がす機能を持ちます。
この大河津分水路では2015年度より大規模な改修事業がおこなわれています。
そして2020年、改修事業の情報を発信する拠点がフルオープンしました。
その名も「にとこみえーる館」。
「にとこ」というのは、改修事業で新たに整備される「新第二床固(しんだいにとこがため)」の略称です。
「床固」は、水流で過度に川底が削られないよう調整する設備を言います。
生活の基盤となる構造物を観光の対象とする「インフラ・ツーリズム」の一環として、地域の活性化や事業内容の認知などの効果が期待されています。
交通量の少ない県道を抜けてたどり着いた「にとこみえーる館」は、木のぬくもりを感じる平屋の建物でした。
駐車場に車を停め、雨が弱まるのを待って入場しました。
受付で検温や連絡先の記帳を済ませると、建物奥のシアタールームに案内されました。
シアタールームでは、貴重な白黒映像で大河津分水路の歴史を知ることができます。
1922年に大河津分水路ができるまで、信濃川河口周辺の越後平野は排水に問題を抱えていました。
水はけの悪い湿地では、苦労して稲を育てても「鳥またぎ米(鳥でさえも食べずにまたいで行くような米)」と呼ばれるほど低品質な米しかとれなかったそう。
当時の人が腰まで水につかりながら農作業をする姿にわたしは衝撃を受けました。
水害と貧しさに苦しむ地域にとって、大河津分水路の開通は悲願でした。
しかし、分水路を開通させるには、信濃川と日本海の間にある山を切り開かなければなりません。
この大仕事のために、明治時代の終わりにはイギリスやドイツから最新の大型土木機械が輸入されました。
それでも工事は困難を極め、およそ20年もの歳月がかかったそうです。
新潟平野が現在の豊かな姿になるまでにこれほど壮絶な努力があったことを、わたしは全く知りませんでした。
映像を見て、未来のために大きな投資をした当時の人々の志に心を打たれました。
館内では他に、パネルや模型で工事の目的や工法について説明する展示があります。
分水路の河口周辺を撮影した巨大な航空写真に備え付けのタブレットをかざすと、コンピュータグラフィックスの工事画像が現れました。
AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった最新技術が活用されているのですね。
(感染拡大防止のためVR用ゴーグルは使用休止となっていました)
これらの展示によって、分水路が完成してからも継続的に補修や機能向上のための工事が行われていることがわかります。
現在実施している改修工事は、川底を整え、分水路の河口を拡げるためのものだそうです。
サケやアユなど、川に生きる魚との共生についても配慮されていることを知り、安心しました。
屋内の展示を一通り見終わって建物の外に出ると、外壁に沿ってスロープが設置されているのに気づきました。
ゆるい傾斜のスロープを上っていくと、にとこみえーる館の屋上にたどり着きました。
館の屋上は全体が展望スペースになっており、工事の様子を肉眼で確認できます。
この日も分水路の河口にかけて、いくつもの巨大なクレーンが動いていました。
普段ならただの工事現場として素通りしそうな光景ですが、工事の意義や仕組みを学んだ今のわたしには輝いて見えました。
「作業員の方、お疲れさまです。安全に工事が進みますように」と祈らずにはいられませんでした。
【魚のアメ横】
「越後七浦シーサイドライン」と呼ばれる国道に乗り、少し南下すると「魚のアメ横」と呼ばれる海産物市場通りが見えてきました。
カラフルな店構えや大きなカニの看板が連なるこの通りこそ、皆さんがイメージする「寺泊」らしい場所かもしれませんね。
県外からの観光客も大勢訪れます。
魚のアメ横通りは全長250mほどの一本道です。
やや広い歩道の片側に、カラフルな看板の海産物店や土産物店が並んでいます。
歩道には屋根がないため雨の日の散策はちょっと大変。
立ち寄るか迷っていたところ、ちょうど雨が弱まってきました。
人通りも少なかったので、駐車場に車を停めて少し歩くことにしました。
駐車場とアメ横通りの間には車道が通っていますが、横断歩道に誘導員がいるので安全に渡れます。
魚のアメ横名物といえば、新鮮な海産物を串に刺して焼いた「浜焼き」。
わたしはイカの浜焼きとタコの唐揚げを購入し、車の中でいただきました。
イカの香ばしさはこれぞアメ横。
滞在は10分ほどでしたが、雰囲気は十分味わえました。
(イカの浜焼き)
(タコの唐揚げ)
魚のアメ横に来ると、わたしは数年前にアール・ブリュット展で見たある絵画作品を思い出します。
それは、アメ横通りが細かいところまでリアルに再現された壁いっぱいの大作。
作家の筒井貴希さんが驚異的な記憶力で描きあげたそうです。
通りのまとまりの中にお店の個性が表現された、大好きな作品です。
この日は他にも水族館やトキの飼育施設にも立ち寄りました。
これらの施設についても後ほど記事を公開する予定です。
とっておきのスポットなので、お読みいただけるとうれしく思います!
にとこみえーる館
https://niigata-kankou.or.jp/spot/43089
入場無料
障害者等用駐車スペース:あり
多目的トイレ:展示室入り口の右隣にあり
段差:ほぼなし
寺泊魚の市場通り(魚のアメ横)
https://niigata-kankou.or.jp/spot/5823
入場自由
障害者等用駐車スペース:あり
多目的トイレ:駐車場にあり
国土交通省 インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/infratourism/
【ご注意ください】
記載の内容は旅をした当時のものです。
変更されている場合がありますので、各施設等の情報は事前にご確認ください。
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