ジューシーに焼けた焼肉


【旅行記・おでかけ記事の目次】
①「男のオムライス」に入ったつもりが・・・
②一人焼肉店「焼肉ライク」ってどんな店?
③初の一人焼肉、焼いてみたら・・・
おわりに――結論、一人焼肉店、弱視は一度試す価値あり――
※参考記事:店員さんが肉を焼いてくれる店「大阪焼肉・ホルモン ふたご(高田馬場駅)


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① 「男のオムライス」に入ったつもりが・・・
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昼下がり、ふと見上げると、ある店の看板に目が止まりました。

「男のオムライス」

新橋を歩いていたボクはその響きにひかれ、入店してみることにしました。

ソースのかかったオムライス
入ると、ジュージューという食欲をそそる鉄板の音が。

「おー!さすが『男の』オムライスというだけあるな」
期待するボク。

白杖を見た店員さんが「お手伝いしましょうか?」と声をかけてくれました。
『男の』サポート、素晴らしい。

そう思いつつ、「大丈夫です」と丁寧に辞退するボク。

メニューを見ると・・・
「焼肉」の文字が。
「なるほどな。『男の』というだけあって、オムライスに焼肉乗せるんだなー」
と思うボク。

が、メニューをめくってもめくっても「オムライス」の文字がない。
お気楽なボクも、ここらへんでさすがに気づきました。

店間違えた・・・

メニューの表紙を見ると、「焼肉ライク」という店名が。

え、どうして?
ボクは男のオムライスに行きたかっただけ。
どこで間違えてしまったの。

男のオムライスの看板の下に焼肉ライクの看板。
一人焼肉、ボクはそんなに男らしくなりたくない。

皆さんご存じの通り、網の上の肉が見えない弱視者/全盲者にとって焼肉ほど難しいお店はありません。

がしかし、もう後戻りできません。


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② 一人焼肉店「焼肉ライク」ってどんな店?
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そういえば、焼肉ライクって聞いたことあるな・・・
とネットで検索。

すると、「一人焼肉店」の珍しいお店としてテレビや雑誌で注目されているそうです。

メニューを見ると、1000円前後で「ごはん・キムチ・スープ・肉」などがつく定食が頼めるようです。

机は個別に仕切られ、一人用の小さめな焼肉網が置かれていました。

お客さんも男性はもちろん、女性一人で来店している人も多いようですね。


※焼肉ライクのセット。


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③ 初の一人焼肉、焼いてみたら・・・
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さて心を落ち着け、注文。

まもなく焼肉が到着しました。
「よく見えない」とか言ってられない、とにかく肉を焼くしかありません。

網に肉を置くと、あのジューという音が。
「おー!いいね!楽しいーー!!」
と初の一人焼肉にテンションが上がるおじさん。

が、それもつかの間。
炎が勢いよく上がり始めます。

「ヘ!」
おびえるボク。

顔が青ざめたおじさん。
「火怖い!もう帰りたい!帰りたい!帰りたい!」
と、焼いていない大量の肉を置き去りにして帰ろうか本気で考えるおじさん。

しかし、それはもったいない。
なんとか気を取り直し、再び焼き始めます。

すると、あることに気が付きました。
お客さんが来店するたび、風が来て、ボッと火が増すような気がする(気のせい?)

追い詰められたボクは、お客さんが出入りするたび、「おい、貴様やめろ!」と心の中で叫ぶように。

火が強まるあみ。
さてなんとか第一弾が焼きあがりました。
焦げているのや、生やら、散々な結果に。


※自分で焼いた肉の写真を出したいところですが、軽い営業妨害になるので、イラストでお楽しみください。


「もう炎怖いし、いっそのこと、すべて生で食ってやろうか!」
と本気で考えるおじさん。
(完全に情緒不安定になっている)

第2弾を焼き始めると、さらに強い炎が。

キャッ!!!
と思ったと同時に、あることに思いあたりました。

「ボクは見えにくいからと、網の上の肉に目を近づけようとするから、怖いんだ」と。
盲学校なら小学校で教えてくれそうなことに気が付きました。

少し焼いては皿に乗せ観察。さらに少し焼いては皿に乗せ観察。というのを繰り返します。
すると、なんと、いい感じに焼けた!


食べてみると・・・
おいしい!

なんでしょうね、単純に肉がおいしいのはもちろん、自分が育てた野菜を食べるときのような、自分が手塩にかけた肉をいただくおいしさ。

普段食べるよりもうまいですね!

なんか世間の人たちが焼肉を楽しむ気持ちが、少しわかったような気がします。

そのまますべてを焼き、完食。
最後は満足し、また来ようと思って退店したのでした。


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おわりに―――結論、一人焼肉店、弱視は一度試す価値あり―――
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ひょんなことから入った一人焼肉店でしたが、最終的に「弱視にオススメではないか?」と感じました。

焼かなくてはいけない点は、やはりネックになりました。

しかし、一般的な焼肉屋さんと違って、この焼肉ライクさんなどは一人ひとり仕切られているので、店員さんや周りのお客さんの目があまり気になりません。

そのため、ちょっとした失敗や、「焼いたものを一度お皿に乗せ、再度焼き直す」といった少し人目が気になる行動もあまり恥ずかしくありません。
なので、弱視にとって普通の焼肉屋さんよりもハードルが低いなと感じました。

一度試してみてはいかがでしょうか?


▼参考記事
店員さんが焼いてくれる焼肉屋さんの記事を紹介させてもらいます。

「ここなら安心!視覚障がい者にやさしいレストラン ~店員さんが肉を焼いてくれる店「大阪焼肉・ホルモン ふたご」(高田馬場駅)編~ Media116
http://www.media116.jp/outing/3850

男性/30代 視覚障害

東京都青梅市出身、練馬区在住の榎戸 篤(えのきど あつし)です。
テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターをしています。

【障がい】
・視力は左0.04、右0。
・3歳の時、保育園で転んでケガをし、弱視に。
・現在は、白杖・単眼鏡を持ったり持たなかったりしながら、ふらふらしています。

【好きなモノ】
つけ麺/お酒/建築/読書/フロアバレー/ニュース

【執筆媒体】
・障がい者ライフスタイルメディア「Media116」
http://www.media116.jp/

・働く×障がいがテーマのコラムサイト「パラちゃんねるカフェ」
https://www.parachannel.jp/column/author/163/
など。

記事のご感想など、こちらにいただけると有難いです。
uj092021@yahoo.co.jp

記事は、ひとつひとつを丁寧に、懸命に、心をこめて・・・書かせていただきます!

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関東, 東京都, 港区
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視覚障害 高齢者
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