芝生に座り青空を見上げる白杖おじさん。


【今回の旅行記・お出かけの目次】
①ガイドヘルパーさんは、自分オリジナルの「メディア」になってくれる。
②見えている風景を伝えてもらうこと。それが自分の景色を変える
③「視覚障がいがあるからこそ、目的のない散歩を。」


昨年、姉が同行援護事業所を立ち上げ、ガイドヘルパーをはじめました。

ガイドヘルパーといえば、買い物、役所など日常的なシーンでの利用をまず思い浮かべますが、旅行やお出かけなどの遊びでも利用できるんだとか。
そこで今回、姉に国営昭和記念公園へ同行してもらい、実際体験してみることに。

単純な「付き添い」にとどまらず、たくさんのメリットがあるなと感じるお出かけとなりました。


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①ガイドヘルパーさんは、自分オリジナルの「メディア」になってくれる。
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今回は東京・JR立川駅近くの昭和記念公園へ行くことにしました。

その旨を姉に伝えると、「昭和記念公園と立川駅の間にあるGREEN SPRINGSっていう施設も最近話題だよ」とのこと。
なんでも2020年に開業し、ホテル、レストラン街、商業施設などがある複合施設なんだとか。

「やるじゃん、姉。」と思いつつ、まずGREEN SPRINGSへ向かうことに。


施設へ到着。
ボク「どこかおいしそうな店はない?」
姉「いろいろあるけど、最近若い女子に人気のスープカレー屋があるよ」

と、北海道発祥のスープカレー屋「Rojiura Curry SAMURAI」に連れて行ってくれました。

おしゃれな店内
行ってみると、店前に女子の行列が。

ボクのようなおじさん一人で行ったら、ボコボコにされそうですね。
しかし!今日は一応、まがりなりにも女子と一緒。

男だけでは入りにくいお店、一人では行きにくいお店にもガイドヘルパーさんとなら行ける。同行援護には、こんな使い道もあったんですね!(たぶんコレ、間違ってる)

さて入店し、注文したのはコレ!!


※写真 「チキンと一日分の野菜20品目」のカレー(税込1,650)



野菜がてんこ盛り!

食べてみると・・・

野菜がとっても新鮮。
トマト、パプリカが甘い。
ブロッコリー、ゴボウは良い歯ごたえ。

これ一皿で、豪華な定食をいただいた気分になりました。

オーソドックスなスープカレーが1500円前後。
その値段を見て若干姉の金銭感覚を疑いましたが、これだけ新鮮な野菜がいただけたら納得です。
(ガイドヘルパーさんは入店前に値段を教えてくれます。念のため)

R Bakeryの外観
その後、姉はこれまた行列ができるという自然酵母のパン屋「R Baker」にも案内してくれました。

トレンドに疎い(うとい)ボクも、人気の施設、人気のお店を存分に堪能。

知らない情報、話題の情報を持ってきてくれる、ガイドヘルパーさんはそんな自分オリジナルの「メディア」になってくれるのかもしれないなと感じました。

昭和記念公園のエントランスエリア
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②見えている風景を伝えてもらうこと。それが自分の景色を変える
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GREEN SPRINGSを出て、いよいよ昭和記念公園へ。

昭和記念公園の広さは東京ドーム約40個分。
これは一人だと迷いそうですね。

広いだけあり、歩き回ると五感のイメージが次々に移り変わります。




きれいな池



草原では草と土の湿った風、
池の周りでは水面から吹くさわやかな風が感じられます。

歩道ではチュンチュンというささやくような鳥の声、
草原ではホーホケキョというのどかな鳥の声、
川が流れるエリアでは水がごうごうと流れる音とセミが四方から勢いよく鳴く声が入り乱れています。


※写真・池のボートをこぐ筆者。一緒に乗っているのが姉なのがかなしすぎる。


歩いていると、姉がふいに「地面にカラスがいる」と言いました。


襲われないか、少し身構えるボク。

しかし、姉は続けます。

姉「私、ここのカラス好きなのよね」
ボク「え、どうして?危なくないの?」
姉「ここのカラスって、おとなしいし、美しいから」
ボク「美しい?」
姉「魔女の宅急便で、絵を描く女性がカラスを見ながら『アンタ美人ね』って言うシーンがあるでしょ?ここのカラスはまさにそう。都会のカラスは常に獲物を狙っているよね。だけど、ここのカラスは違う。穏やかで、凛(りん)としている」

ボクは、カラスはみんな怖いものと考えてきました。
もしかすると、一羽一羽のカラスが見えないから、頭の中のイメージで決めつけていたのかもしれません。

たしかに、よーく耳を澄ますと、都会の鋭く、威嚇するような声とは違った、野鳥に似た優しい声をここのカラスは出しているようでした。

見えている風景を伝えてもらうことで、感じ取る景色がこんなにも変わるんだなーと思ったのでした。


※園内を走るパークトレインに乗るおじさん。


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③「視覚障がいがあるからこそ、目的のない散歩を。」
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最後に行ったのが、公園中央にある「みんなの原っぱ」です。
東京ドーム2つ分の広さで、芝生がどーんと広がっています。

ボク「みんな、ここで何してるの?」
姉「え、何してるとか、そんなもんないよ」
ボク「ハッ??」
姉「ヨガやってる人とか、フリスビーやってる人とかもいるよ。
だけど、ただ寝転んでる人、ベンチに座って何もしていない人、そういう目的を持たずにただいるだけの人もたくさんいるよ」


ボク「目的がない人も?」
姉「そう。私、外で目的なく過ごす時間って大切だと思うんだよね。目的を持たず、息をすること、太陽の光にあたること、芝生の感触を味わうこと、それによって心が安らぐ。スティーブ・ジョブズなんかも目的を持たず、一つに集中する瞑想の大切さを言っていたけど、まさにそう。それは人間にとって大切な時間なんじゃないかなって」


姉「そして歩くことも同じ。用事や買い物のために歩くこともある。だけど、時には目的なく足元の感触、風、周りの音だけを感じて歩くことも大切なんだと思う。「散歩瞑想」なんていうことも言われているけど、私、そういう時間って人間にとってこの上ない贅沢な時間なんじゃないかなと思うんだよね」


その言葉を聞いて、ボクは見えにくくなるにつれ目的のない散歩を避けるようになったことを思い出しました。


この何年か歩くことにはリスクがあり、できるだけ合理的に歩こうとしてきました。

ただ振り返ると、実はその目的のない散歩の時間が心の毒をとったり、気持ちを切り替えてくれていたんだよなと感じます。

公園内にさいていたアジサイ
そう心の中で考えていると、姉が最後にこう語ってくれました。


姉「だからね私、視覚障がいがある人にも、いえ視覚障がいがある人にこそ目的のない散歩を楽しんでもらえたらなって思うんだよね。そのおともができたらいいなって」

「視覚障がいがある人にこそ目的のない散歩を」―――
ボクら視覚障がい者にとって、実はこれを行うのが一番難しいことなのかもしれません。

何かのためにガイドヘルパーさんにお願いすることも多い。だけど、たまには一人では躊躇(ちゅうちょ)してしまう、目的のない散歩をお願いするのもよいのかもしれない、と芝生に寝転び、夏空を見上げながらボクは思ったのでした。





▼GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)公式HP
https://greensprings.jp/

▼昭和記念公園公式HP
https://www.showakinen-koen.jp/

▼施設・公園近くの旅行記
【白杖おじさん潜入取材】D&D BOXING GYM東京昭島
https://www.cotravel.jp/diary/index.php?uniqueid=5eedb2cc660b8




男性/30代 視覚障害

東京都青梅市出身、練馬区在住の榎戸 篤(えのきど あつし)です。
テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターをしています。

【障がい】
・視力は左0.06、右0。
・3歳の時、保育園で転んでケガをし、弱視に。
・現在は、白杖・単眼鏡を持ったり持たなかったりしながら、ふらふらしています。

【好きなモノ】
つけ麺/お酒/建築/読書/フロアバレー/ニュース

【執筆媒体】
障がい者ライフスタイルメディア「Media116」
http://www.media116.jp/
など。

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旅行エリア
関東, 東京都, 立川市
旅行期間
対象読者
なし
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