ボルダリングの壁。


■■■■今回の旅行記・おでかけの目次■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
①障がい専門ボルダリングジム「KSK's ROCK CRAFT」
②視覚障がい者でも入りやすいのか?
③白杖おじさん、ボルダリングに初挑戦!
④小学生に教えてもらった、ボルダリングのおもしろさ。
おわりに―――今は亡き、障がいのある子の思い、受け継いで。―――
※施設の概要・バリアフリー情報・アクセス
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ジムの看板。
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①障がい専門ボルダリングジム「KSK's ROCK CRAFT」
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最近話題のボルダリング。
視覚障がいのボクでも、気軽にできる場所はないだろうか?
そう思い、ネットで検索。
すると、「障がい児・障がい者専門ボルダリングジム」の文字が。

これだ!!
と、さっそく埼玉県鴻巣市にあるKSK's ROCK CRAFTへ行ってみることに。

JR北鴻巣駅でバスに乗り、揺られること10分。
目的のバス停へ。
(鴻巣駅からタクシーでも行けます)

のどかな道。
地図を見ながら、肥料のにおいがほんのり漂う、のどかな通りを歩いていきます。
目的地に到着。
がしかし、視線を上げると、フツーの住宅。

ホントに、ここで良いのか・・・?
これまで何度となく人の敷地に迷い込み、各地をお騒がせしてきたボク。
慎重に近づきます。

すると、「榎戸さんですかー!!!?」と、中から大きな声が。
その声の主が、ジムの経営者・弓田 祐代(ゆみた さちよ)さんでした。

黒の壁にカラフルなホールド。
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②視覚障がい者でも入りやすいのか?
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さっそく、中に入ってみると・・・
「車庫を改装した」というだけあって、こじんまりしています(←良い意味で)。
貸し切り制なので、人目も気になりません。

以前別のジムに行き、あまりの広さと、中にいる人たちの若者らしさにびくつき、受付で引き返した前科のあるボク。
しかし、ここなら大丈夫です。

ジムの内観の手作り模型
しかも、弓田さんはずっと介護・福祉のお仕事をされてきた方。
そのためか、とっても親切で、話しやすい。
触って理解できるように、ジムの内観の立体模型も用意してくれていました。

壁にも工夫が。
壁が黒、石(以下、ホールド)がカラフルで、弱視でも見やすくなっていました。

登り始めてからは、弓田さんが「11時の方向につかむホールドがあります」など、言葉でホールドの位置を説明してくれました。

初心者マーク。
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③白杖おじさん、ボルダリングに初挑戦!
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さて、さっそく挑戦!

ホールドに乗ると・・・
え・・・?
言葉を失うボク。

絶句する筆者。
あのさ、ボルダリングって、ひょいひょい登ってくやつだよね?
壁にしがみつくのが精いっぱいだよ?
ホールドに全体重かけるってこんなにしんどいの?
足痛いよ?
手がプルプルしてるよ?

頭の中で、ボルダリングに罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせるボク(弓田さんごめんなさい)。

壁にしがみつく筆者。
体がきつい。
そして、見えない状態で足を離すのが怖い。
次のホールドを探し、足を宙に向け、カクカクさせるボク。

しがみつき、足だけちょっと動かす―――そう、ボクは死にかけのセミのようになっていました。

セミ。
その後、弓田さんのアドバイスもあり、超初級レベルはなんとか登れるように。
しかし正直、この競技のおもしろさがわからない・・・(弓田さんごめんなさい)。

カラフルなホールド。
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④小学生に教えてもらった、「ボルダリング」のおもしろさ
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そんな時、近所に住むという小学4年生の男の子がやってきました。
なんでも、はじめて半年だとか。

小4なら、勝てる!
鼻息を荒くするボク。

しかし、少年が登り始めた瞬間、ボクは絶句しました。

彼は、サルのように壁をさささっと登り、上まですぐに到達。
ボクが苦労した超初級コースなど、10秒足らずで登る始末。

サル。



ボクのライバル心は、一気にへし折られました。

「いいんだ、いいんだ。ボクはボルダリングの才能ないからさ」
いい歳をして、いじけるボク。

そんな気持ちを胸に、ボクは椅子に腰かけ、少年を見つめていました。
しばらくすると、弓田さんが「もう1回やってみたらどうですか?」と声をかけてくれました。

「いいんです、いいんです。ボクはどうせセミですから。」と一瞬思うボク。









しかし、せっかくなので、再度挑戦。

ホールドに乗り、よっこいしょっと足を上げようとした瞬間、ボクはカッと目を見開きました。

あれ!??
さっきまで、ものすごい足を踏ん張っていたのが、すいっと体が持ち上がる。
体が体重移動を覚えたらしい。
できなかった箇所に挑戦すると、登れる・・・

これは、ちょっと楽しいかも!!





しかし、次のレベルへ行くと、やはり難しい。
4番目ぐらいのホールドで落ちてしまいます。

すると少年が、
「これはね、体をひねってここに右足を置くんだよ」と教えてくれました。
少年の言う通りやってみると、なんと登れた!
そして、5番目、6番目と、ひとつひとつ攻略法を伝授してくれました。

ホールドをつかむ手元。
ボルダリングって、それぞれのホールドに攻略法があって、それを体や頭で覚えクリアしていく。
そんなゲームみたいなところがあるんだ。

そう感じた瞬間、ボクはこの競技が一気に好きになりました。

これなら、見える/見えない関係なく楽しめるなー
そう思ったのでした。

壁のホールド。
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おわりに――― 今は亡き、障がいのある子の思い、受け継いで。―――】
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ボルダリングの途中、弓田さんにふと、どうしてジムをやろうと思ったんですか?と尋ねてみました。

すると、
「実は私には、発達障がいの息子がいたんです。

その子はボルダリングが大好きでした。
この場所で、小さい頃から練習してましたね。その壁に、買ってきたホールドをつけたりして。

そして、息子の夢は子どもたちにボルダリングの楽しさを伝えることだったんです。

ですが、24歳の時に交通事故の後遺症で亡くなってしまった。
ずっと息子が夢に描いてきたこと。これは、おかんがやるしかない。
そう思ったんです」

弓田さんは遠い目をしながら、そう話してくれました。

話をする弓田さん。
「正直、最初はいろいろな方から反対されました。
お金にならないよとか、難しいよとか。

でも、お金じゃないんですよね。

たとえば、障がいのあるお子さんが大きくなると、なかなか体を動かせる場所がなくなってしまう。
公園に行っても、その周りだけさっと子どもがいなくなる。
そんな光景を見て、親御さんはすごく悲しい思いをされてる。

そして、子どもと共に家に引きこもる。
そんなお子さんたちが体を動かせる場所、家族そろって周囲を気にせず遊べる場所がつくれたらと思ってるんです」

そう語ってくれました。

弓田さんのご長男・渓介(けいすけ)さんは、ジムの名前KSK(ケイエスケイ)'sという名となり、今もこの場所に生き続けています。


※本文ここまで。


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施設の概要・バリアフリー情報・アクセス
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▼施設の概要
「KSK's ROCK CRAFT」
<住所>
〒365-0014 埼玉県鴻巣市屈巣3649
<アクセス>
JR高崎線北鴻巣駅下車。東口のバス(川里循環コース右回り)で10分、上谷田北(かみやたきた)へバス停から徒歩5分程度。
鴻巣駅からタクシーで15分ほど(2000円前後)
(バスの詳細はHPに掲載)
<TEL>
090-6516-5162
<基本料金>
貸し切り制・60分1500円(3名まで同一料金。4名から1名毎に+500円)
レンタルシューズ・200円
<営業>
平日・9時00分~18時30分
休日・10時00分~18時30分
<URL>
https://ksks-rock-craft.p-kit.com/index.php
※詳細情報は必ず施設HP等でご確認ください。


▼バリアフリー情報
〇視覚障がいポイント
・貸し切り制で、人目が気にならず、自分のペースで楽しめる。
・壁が黒、ホールドがカラフルで見やすい。
・登る時に指示をしてくれるなど、弓田さんが親切です。
※弓田さんいわく、「身長100㎝から登れるジムです。障がい者の方は一般ボルダリングジムに挑戦する前の入門施設として是非いらして下さい」とのことでした。

ヘビの形のホールド。


汽車の形のホールド。



〇障がい児のポイント
・貸し切りなので、その子のペースで遊ぶことができます。
・ホールドが動物や乗り物の形をしていて、子どもが興味がわくようになっています。
・登るルート(課題)が同じ色のホールドで作られていて、子どもたちにわかりやすいようになっています。
・段ボール箱で作られたシーソー・バランスボードが置いてあるなど、ボルダリング以外にも子どもが楽しめるスペースがあります。
・療育にぴったり。
・弓田さんが経験豊富で、いろいろな相談に乗ってくれます!

強化段ボールで作ったシーソー、バランスボード。



▼アクセス
<JR北鴻巣駅~バス停>
JR北鴻巣駅の電車を降りたら、ホームの階段を上がる。

改札を出る。

改札を背に、右へ。突き当たりまで行く。

左の下り階段を降りる。





階段降りたら右へ。

段差降りて5歩ほど行くと、すぐバス停。
(※段差見えにくいので注意!)





<バス停「上谷田北(かみやたきた)」からジムまで>
上谷田北のバス停で降車。

バス進行方向から見て後ろ側へ直進。

300歩ほど行くと、大きな交差点があるので、それを左に曲がる。





交差点を背に、500歩ほど直進すると、左手に水色の看板が掲げられた民家があり、そこがジムです。








【引用】
▼各イラスト
illustAC
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=2060616&word=%E3%82%BB%E3%83%9F

男性/30代 視覚障害

東京都青梅市出身、練馬区在住の榎戸 篤(えのきど あつし)です。
テレビ番組の制作会社で働きながら、ライターをしています。

【障がい】
・視力は左0.04、右0。
・3歳の時、保育園で転んでケガをし、弱視に。
・現在は、白杖・単眼鏡を持ったり持たなかったりしながら、ふらふらしています。

【好きなモノ】
つけ麺/お酒/建築/読書/フロアバレー/ニュース

【執筆媒体】
・障がい者ライフスタイルメディア「Media116」
http://www.media116.jp/

・働く×障がいがテーマのコラムサイト「パラちゃんねるカフェ」
https://www.parachannel.jp/column/author/163/
など。

記事のご感想など、こちらにいただけると有難いです。
uj092021@yahoo.co.jp

記事は、ひとつひとつを丁寧に、懸命に、心をこめて・・・書かせていただきます!

旅行エリア
関東, 埼玉県, 鴻巣市
旅行期間
対象読者
視覚障害 肢体不自由 歩行補助具 発達障害 知的障害 精神障害 内部障害 高齢者 マタニティ 乳幼児連れ 補助犬ユーザ その他
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