泡スプレーを撒き散らす著者とインドのおじさん。そして色まみれにされた子どもと日本人たち

     


2017年の春、私はインドに来ていた。ホーリーは毎年春に行われるインドの伝統行事。春の訪れを祝い、五穀豊穣を願う祭り。この日は誰彼構わず色粉や水ぶっかけて普段飲めない酒も飲んで騒ごう!無礼講だから怒ったらダメ!何をしても許してね!というルールがある。何をしても許される。私はホーリを体験してきた。

ホーリーを楽しむ幼稚園児くらいの3人の子どもたち、顔が粉まみれ
インドのホーリーは危険なお祭りとしても有名だ。ホーリーはインド全域で行われるが、地域によってホーリーのレベルが違う。ざっくり言うと都会はやさしいレベルで、田舎は荒々しい。

やさしいレベルは色粉や水をぶっかけられる程度で済むが、荒々しくなると糞や泥に石を入れて投げられたりすることもあり性犯罪に走る人もいる。

インドの女性はホーリーの時は基本的に家からでない。外に出て体験したい時はその地域のホーリーの度合いがどのくらいかチェックして男数人と一緒に行動したほうが良さそうだ。(2020年のホーリーは3月10日)



閑静なグルガオンの交差点、トゥクトゥクが走っている、街路樹がたくさん
場所はデリー近郊のグルガオン。最寄り駅はイフコチョーク(IFFCO CHOWK)駅。ニューデリーからイエローラインのメトロで約40分かかる。グルガオンは開発が進んでいる都市としても知られ、人混みが少なくきれいなところである。イフコチョーク駅の近くにはキングダム・オブ・ドリームス(Kingdom of dreams)というボリウッドミュージカル劇場がある。

ホーリーを楽しむためには準備が必要だ。事前の情報収集でホーリーの過激さを知った私は補聴器を着用しないで行くことを決める。一緒にホーリーに行くメンバーには補聴器をつけていない間のコミュニケーションはジェスチャーで対応してくれとお願いする。

そして汚れても良い服装というかもはや捨てても良い服装の準備。ホーリーの色粉はカレーの如く洗っても染み付いて取れない。

せっかくのホーリーは写真に残しておきたいところ。リスクはあるけどスマートフォンをポリ袋にいれて持って行くことにした。



路上のホーリーの色粉売りの屋台、荷車の上に大量の粉が入った小袋とスプレー缶
そして無礼講ならばこちらもしっかり無礼講でいこうではないかと色粉の入った小袋3種類と泡スプレーを購入した。

そして迎えた当日、宿のベランダから見た範囲では何も起こっていないようだった。

数人のメンバーと一緒に路地裏へ向かった。

子どもたちが走り回っていた。



秒で粉まみれにされる。



よろしい




ならば私のホーリーをはじめよう。





色粉を付けようと子どもを追う著者
獅子は兎を狩るにも全力を尽くす。



色泡スプレーを著者から取ろうとする小学校低学年くらいの丸坊主の子ども
私から泡スプレーを奪い取ろうとする子ども。油断がならない。



小学校の運動会で小麦粉の入った箱の中に顔を突っ込んで飴を探す種目があったがそれ以来顔に粉がくるなんて久しぶりのことである。

顔に粉をバサーっとかけられ鼻の穴や口から気道に入りむせてしまう。普段息ができることに感謝する。

ひとしきり子どもとキャッキャッとしていたら早くも手持ちの武器がなくなってしまった。泡スプレーは残っていたのだが泡を噴出する前に相手に逃げられてしまうことが多かったので役に立たなかった。



路地から現れる青年たちと二階のベランダに立つ女の子
タイミングを図ったかのように顔に満面の笑顔を浮かべた青年たちがどこからともなく現れる。

そして粉は投げつけるだけではなかったことを思い知る。塗りたくられる。手に乗せた並々の色粉をゴリゴリ顔に塗りたくられる。

これは背の低い子どもたちにはできない。路地裏に入って1分もしない内に色まみれ。

私たちはさらに路地裏に入っていく。

突然真上から水を降りかかってきた。「バケツをひっくり返したように降る」という表現があるが、これはまさにバケツをひっくり返して浴びせている。

当然雨より痛い。

先ほどインドの女性は家から出ないといったが、彼女たちは家からは出ないがホーリーには参加するのである。

こちらの攻撃が及ばない二階以上のベランダから。

もう一度上の写真をご覧いただきたい。2階部分に緑の服を着た少女がいる。



そう



彼女も刺客だ



集合住宅そばの細い路地に入ってくる者はかっこうの餌食だ。上から水が降ってくる。逃げられる者はいない。地面がびしょびしょだ。

建物のベランダから水を浴びせられる著者たち
ここまででお分りいただけたであろうか。補聴器が無事ではすまないことを。ホーリーを楽しむ補聴器ユーザーはくれぐれも補聴器を外してほしい。

無法地帯のように語ってしまったが、ホーリーの騒ぎにあまり乗っていない人にはあまり色粉まみれにはしないようなルールがこの地域には何となくあるようだ。

でもちょっと色粉ついていたりする。


色粉を顔に塗られる人とそれを見て微笑むおじさんたち
おじさんたちは優しい眼差しでホーリーの様子を眺めていた。

よく見ると顔にちょっと色粉がついていたりする。


牛にも色粉ついていた時は笑った。外にいるものはみなホーリーの参加者なのだ。

色粉を塗られた牛たち
ちなみに私はホーリーでは一切暴行されていないし、ケガもしていない。読者の方はこのことを頭に入れて下の写真を見て欲しい。












赤多めの粉まみれにされたホーリー後の著者。血まみれにみえる。
これがホーリーを終えた直後の私の姿だ。

色粉を落とそうとシャワーを浴びた時に初めて気づいたが色が簡単に落ちない。どれだけ石鹸でこすってもうっすら残っている。
事前に肌にオイルなど塗っておけばよかったと後悔した。皆様はこれもしっかり準備しておくこともおススメする。

ホーリー中は補聴器を外し、ほぼ音が聞こえない状態であったが問題はなかった。粉を相手につける際「ハッピーホーリー!」を唱えるもこともあるが、ほとんど「イエーイ!」と歓声をあげるのがほとんどだった。言葉はいらなかった。ただただ互いに色まみれにするだけだった。



著者とホーリーを楽しむ人たちで記念写真、インドのターバンを巻いたヒゲが長い人や子供たちと日本人たち
私は平和的にインドのホーリーを楽しむことができた。


ちなみにわざわざ荒々しいレベルのところまでいった友人(男)から上着を破かれ買い直すもまた破かれパンツまで剥ぎ取られそうになったと話を聞かされた。


私は何故かちょっと羨ましかったので次はグルガオン以外のホーリーを体験したい。

男性/30代 聴覚障害

外国に行くと「ケニチロ」と呼ばれてしまう著者。
宮城県仙台市在住。生まれつき両耳70dBの聴覚障害があり補聴器をつけている。口話と手話を使う。英語など外国語が話せないが海外では知っている単語やジェスチャー、筆談を駆使してコミュニケーションを取る。
イラストなどのグラフィックや似顔絵の仕事をしている。読書や旅が大好き。この世界のことをもっと知りたい。私の旅の話が読者の旅の役に立てれば嬉しい。
障がい者のライフスタイルメディアMedia116で漫画連載。URLはこちらhttp://www.media116.jp/
ケンイチローのTwitterはこちらhttps://twitter.com/tdk1r

旅行エリア
アジア, インド, その他の観光地
旅行期間
対象読者
聴覚障害
見つけた設備・特徴 ピクトグラムの説明 新しいウィンドウで開きます
なし
関連タグ
聴覚障害補聴器インドグルガオンホーリー